『忌館―ホラー作家の棲む家』 三津田信三

忌館―ホラー作家の棲む家 (講談社文庫 み 58-1)忌館―ホラー作家の棲む家

三津田信三の作品は、ホラーなのかミステリーなのか境目がわからない。

だけど思うことに、人間自体が怪奇と呼べる存在になりえるということがある。

タイトルに忌館とあるが、これは文庫化され後に付けられたもので、

最初に本が出された、講談社のノベルス版には付いていない。

僕は、そちらの最初の方は読んでいないので、今作を読むときに、

館という存在が、どれほどの強い意味合いを持つのだろうと思った。

家には、色んなものが住み着くと僕は思っている。

もちろん人もそうだが、動物であったり、思い出、あるいは呪い。

つまりは、想いが刻み込まれたり、まとわり付いたりするんだろう。

うん、漫画や小説の読みすぎだろうか。

最初この作品がホラーなのかミステリーなのかわからなくなると書いたが、

もう一つわからなくなることがある。

それは、どこまで現実でどこまでが虚像なのかということだ。

行き着くとこまで行ってしまうと、現実はあったのかとまで疑ってしまう。

しかも作者の体験談を基に書いてあるということなので、

本当の意味でどこまで本当でどこまでフィクションなのか。

そんなこと有りはしないだろうが、実はこの事件までも、

断片的だが、本当にあったことなのだろうかと錯覚までしてしまう。

怪奇・幻想という言葉がよく似合う物語だと思った。