『忌館―ホラー作家の棲む家』 三津田信三
三津田信三の作品は、ホラーなのかミステリーなのか境目がわからない。
だけど思うことに、人間自体が怪奇と呼べる存在になりえるということがある。
タイトルに忌館とあるが、これは文庫化され後に付けられたもので、
最初に本が出された、講談社のノベルス版には付いていない。
僕は、そちらの最初の方は読んでいないので、今作を読むときに、
館という存在が、どれほどの強い意味合いを持つのだろうと思った。
家には、色んなものが住み着くと僕は思っている。
もちろん人もそうだが、動物であったり、思い出、あるいは呪い。
つまりは、想いが刻み込まれたり、まとわり付いたりするんだろう。
うん、漫画や小説の読みすぎだろうか。
最初この作品がホラーなのかミステリーなのかわからなくなると書いたが、
もう一つわからなくなることがある。
それは、どこまで現実でどこまでが虚像なのかということだ。
行き着くとこまで行ってしまうと、現実はあったのかとまで疑ってしまう。
しかも作者の体験談を基に書いてあるということなので、
本当の意味でどこまで本当でどこまでフィクションなのか。
そんなこと有りはしないだろうが、実はこの事件までも、
断片的だが、本当にあったことなのだろうかと錯覚までしてしまう。
怪奇・幻想という言葉がよく似合う物語だと思った。