『EDEN ―It' s an Endless World』 遠藤浩輝

EDEN 1―It’s an Endless World (1) (アフタヌーンKC) EDEN 18―It’s an Endless World (18) (アフタヌーンKC)

それでも世界は終わらない―

人間は罪深い存在なのか。

世界は残酷なのか。

だとしたら、僕らの楽園はどこにあるのか。

ただ一つわかっていることは、例え僕が死んでも世界は続いていく。

そのような生きることへの禅問答みたいなことをした時期が、

誰しもあるんじゃないだろうか。

「EDEN」は、言ってしまえばまさにそのような、

とても青臭い思いを抱いていたあの頃。

そう、いつの間にか忘れ去ることになる時代への、

追悼であり、オマージュであり、パロディであり、インスパイアでトリビュート。

そして、あの頃へのレクイエムであり、

そこから未来へ向かって、弱弱しくも一歩を踏み出す道標のような作品だった。

その先に希望が無くても、生きているのだから。

作者も言っているが、内容はまさにエヴァンゲリオンを彷彿させる。

人が溶け合うかのように、吸収される

コロイドという存在には、あの赤い海を。

特に、最終回での、え?コレで終わりなところまでも。

結局のところ作者の感情が、作品からさえこぼれ落ちているようだ。

たぶん、最初思い描いていた方向へは進んだのだろうが、

あらゆるところが抜けてしまい、消化不良。

エンターテイメントではなく、自分の為の物語といったところか。

だけど、共感してしまう面がちょこちょこ出て来るだけに、

最後まで付き合ってしまった。

様々な社会問題を含ませながら、神話、宗教、科学と

多くの事例を展開されるこの物語は、

主人公の少年の成長譚であり、転落であり、

目まぐるしく語り部の変わることで、

多くに散らばってしまったカケラを眺めているようだった。

主要と思われる人物も、次々に残酷にも死んでしまいうという

無駄な死を眺めながら、世界を作った神様の気持ちを考える。

神様は気が狂いながらも、私達を愛しているんだから
漫画の中にあったこの言葉が鮮明に浮かぶ。

第1話で小さな島で育った主人公の少年エノアは、やがて大人に変わる。

2話からは、その少年の子供エリヤが主役を引き継いでいく。

だけど、エリヤはやがて壊れてしまう。

様々な世界の残酷さを目の辺りにして。

そして話は再び、エノアに移って行く。

彼は1話で語った。罪を背負うのは僕の役目だからと。

上の左の画像は1巻の表紙だが、

それはエノアとやがてエリヤの母となるハナの幼い頃になっている。

中央の機械は、ケルビムというエノアが子供の頃から付き添ったロボット。

ちなみにこのケルビムは、後にエリヤへと引き継がれる。

最終巻の18巻では、大人になったエノアと、子供のままのハナの姿。

そし中央には、やはりケルビムが。

エノアから始まった物語は、エリヤへと移り、

そしてまたエノアによって幕を閉じられる。

物語の最初の舞台だった島へと、エノアとハナは還っていく。

下の世代のものは、上の世代が築いていったものを、

どうあれども背負って生きていかなければいけないが、

それを清算すべきは、やはり上の世代だったんだろう。

ハッピーエンドにはほど遠く、楽園も遥か彼方。

人の思いは届かない。神様は相変わらず狂っている。

どうあれども、世界はそれでも終わらない。