『夢の中まで左足』 名波 浩 増島 みどり

名波浩 夢の中まで左足 夢の中まで左足

移動中の新幹線で、

足置きを使いながら眠ってしまったことがある。

気がつくと、ものすごい勢いで、

ガツンと足置きを蹴り上げてるんだ。

イテテテ、と言うほど痛くて擦りむいていたんだけれど、

そのとき、本当に笑ったよ。

だって、夢の中まで左足で蹴っていたんだから。

現在、トータス松本の「oh my radio」を聞きながら書いている。

リスナーから、新しい仕事場でのアドバイスというメールに

とにかく情熱を持てと熱っぽい口調で語っているのが印象的だった。

その情熱という言葉が似合いそうもない、クールなレフティと、

僕の中では混じり合っていくかのよう。

名波浩の現役最後の1年に書かれたコラムを集めて作られたこの本。

名波の関連本で、過去に読んだ、

『泥まみれのナンバー10』『NANAMI 終わりなき旅』

と比べたら、ややインパクトに欠けた内容だったけど、

最後の1年の心境、これまでの記憶を語っているだけに、

どうにも感慨深いものがある。

高校からコンビを組んでいた「藤田俊哉

代表でボランチを形成した「山口素弘

交流深く、どちらもお互いのファンというミスチルの「桜井和寿

この3人との対談のオマケもついている。

読み終わったら、情熱を燃やしつくしてスパイクを置けたのだと思えた。

とにかくサッカーにこだわり続けた。

サッカーが上手いとか、下手とか、そういうこだわりもあるだろうけど、

純粋に自分の目指すサッカーへ突き進んだ。

それが出ているのが、

一番最初に書いた夢の中まで左足というエピソードであったり、

何が何でも左足という、本の中で出てきた言葉だと思う。

足りないものを探しに行くというイタリア行きの言葉、

イタリアから帰ってきて、意地を見せMVPに輝いたアジア杯、

そこで出た、パスタをくいに行ってわけではないという言葉。

まあ、言葉よりプレイが物語っている。

でももう真剣勝負での名波のプレイは見れないのは寂しい。

と語っていたら、トータスの「oh my radio」も

あと2回で最終回ということに。

やはり、始まりがあるものはやがて終わる。

幸運なことに僕は、名波は好きだけど、

ジュビロ磐田というチームが、今はアレでコレでソレだけど、

やっぱり好きなわけで、ジュビロのサッカーは続いていく。

とりあえずのところ。

そして名波は、ジュビロ磐田というチームが好きと断言している。

今もアドバイザーとしてジュビロに関わっている。

これはファンとしては、とても嬉しい言葉。

いつかまた緑にピッチで。

左足の放物線は見れないかもしれないが、指導者として。