『ボトルネック』 米澤穂信
自分がいない世界では、何が変わっているだろうか?
そんなIFの世界に入り込んだ主人公が、
自分の世界では生まれず、IFの世界で自分の代わりに生きている姉と共に、
元の世界へ帰るための方法を探しながらも、
自分の世界と自分のいない世界との違いに気づいていく、間違い探しの物語。
青春小説独有の青臭さと孤独感が、淡々と語られながら、
次第に、どうしようもない残酷な事実が突き付けられる。
自分自身がボトルネックだったという。
自分という存在を、根底から揺さぶられる物語は、すごい痛みが伴った。
東尋坊から始まる物語は、普通の青春小説のような、
眩しさこそないが、淡く、儚い。
懐かしくなんかない。爽やかでもない。
若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない――。このキャッチコピーが、作品の雰囲気を物語っていた。