『容疑者Xの献身』 東野圭吾

容疑者Xの献身 容疑者Xの献身 直木賞受賞を果たした、東野圭吾さんの新刊本。 ややネタバレしますんで、未読のかたは、お気をつけて。 主役の容疑者Xさんこと石神という数学教師に感情移入できるかも けっこうな、ポイントになるかと。 僕は、文系人間なので数学嫌いですし(解ける問題なら好きだけど) 中年親父で、容姿も悪い。 そんな親父の献身を、どう受け止められるかが。 真犯人を必死で、この世のあらゆるものから擁護しようと 犯罪を犯してまで、守っていく物語。 確かに、命がけの深い愛情による殺人劇でした。 ストーカーまがいではなく、純愛だったと僕は、思います。 ただ、現在ドラマ放映中の『白夜行』と比べると、 スケールが小さいし、しかも、けっこう似ている内容。 運命の数式と言うには、こちらも映画放映中の『博士の愛した数式』 と比べると、あまり心に響いてこない。 それでも、この数式が、真犯人たちをっていうか ネタバレなんで言いますね。 容疑者Xの愛した親子を救う、唯一のものになっていくのです。 だけど、自己の論理で守られている容疑者Xは、ともかく ごく普通の親子に耐えられるものであるはずもなく…… 容疑者Xの献身は、 時にゆりかごのように優しく護り 時に刃のように鋭く、身を切り刻む。
人は、時に、健気に生きているだけで、 誰かを救っていることがある。
救われる考え方だ。 ブラウン管越しの世界で生きている人間でも ステージ上で輝く人間でもなく、 ごく普通の、人間でも、そのようなことがあるなら。 願わくば、容疑者Xの献身が、 本当の意味で親子を救うものであってくれますように。