『おかしな二人―岡嶋二人盛衰記』 井上夢人
作家岡嶋二人(井上夢人、徳山諄一)の繁栄と衰退を描いたエッセイ。
ド素人の二人が江戸川乱歩賞を狙い、コンビを組み小説を作っていく。
お互いの足りないものをお互いで埋めあう。
そして訪れるすれ違い、恋人のような夫婦のようなコンビは、
まさにおかしな二人。
この本は、岡嶋二人の片割れである井上さんの著作。
岡嶋二人は今はもうコンビを解消してしまった作家だ。
これは、井上さんの視点で描かれた岡嶋二人の物語。
岡嶋二人は両方とも男性なのだけど、
二人の歩みは、まるで恋人のよう。
出会い、共に楽しみ、やがて作家として繁栄、
そしてすれ違い、なんとか一緒にやっていこうと努力するけども、
終わってしまうこの二人の物語は、恋愛小説のよう。
岡嶋二人の、各作品の執筆背景もこと細かく書かれており、
これから岡嶋二人の作品を読む人には、
多少ネタバレになってしまうし、わからない部分も出てくるけど。
このおかしな二人は、単なるエッセイでなくて、
小説として、物語が上手く書かれていて十分に楽しめる。
井上さんにとって今や、架空といってもいい作家岡嶋二人への、
皮肉とも、未練とも、決別ともとれるような本だった。
二人は、この本を読んだだけでも読者には、やっぱりわからない。
きっと、井上さんにもよくわからなかったんだと思う。
だから、おかしな二人というタイトルだったんじゃないだろうか。
友達のようで、恋人のようで、夫婦のようで、戦友だった。
もしかしたら、互いの利益のために共同していただけかもしれないし、
今となっては、岡嶋二人はもういないわけだから、それはわからない。
ただ、いい作品を作っていたというのは本当だと思う。
まだ、岡嶋二人の本を少ししか読んでないけれど、どれも魅力的だったから。