「サマー/タイム/トラベラー」 新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1)  ハヤカワ文庫 JA (745) サマー/タイム/トラベラー

SF好きのための、完全なるSF小説

SF好きにはたまらないほどの古今東西のSFの物語も話に出されている。

僕の大好きなハインラインの『夏への扉』も、もちろんのこと。

しかし、この話にはタイムマシーンもパラッドクスもない。

過去と未来を繋げるものもなど存在はしていない。

いまのところは。

時間跳躍。

それが、このSF小説の鍵となることは間違いないだろう。

2巻をまだ読んでいないが、

時を駆ける、未来に向かって駆ける少女の話になるのだろう。

主人公が過去を振り返る形での話しとなるので、

すでに、この主人公の中で物語は完結している。

戻れない過去、走り去る現実、そして遠い未来。

その穏やかな時間の流れは、とても優しい、

しかし、きっと残酷なものに変わるのであろうと予想されるものだった。

セカンド・チャンス

文中にもあるように、それこそが僕らが

タイムトラベルを愛する、最も強い理由なんだろう。

しかし、過去に行くなんて事は起こりえない。

しかし、未来のみ行けるのなら。

そして、それを見送る側の立場ならば……

あらかじめ失われた未来
もしも、未来へと駆けるのならば……

そして主人公達は、まだ若い高校生。

モヤモヤした感情、忍び寄る不安。

舞台は夏。

二度と戻らない夏。

最期の、恐らく別れへと繋がるであろう夏。

夏の時間旅行。

これはSF小説であり、ジュブナイル小説だった。

2巻は、いったいどうなるのだろう。

静かな不安と動揺、そして後悔。

そういうモノが主人公から感じられた。