『サマー/タイム/トラベラー2』 新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー2 サマー/タイム/トラベラー2

今日は久しぶりに電車に乗った。

長時間乗ったということについては、さらに久しぶりだった。

思わず読書が進んだ。

中、高の時期に電車通学していたら、

きっとその時期から本を読み始めていただろう。

もしも大学へ電車通学していたら、今の3、4倍読書しているだろう。

これは、可能性の話だ。

しかし僕は、中、高と自転車通学だった。

そのおかげで、中学から使っている自転車を

わざわざ隣の県にまで、引越しの際大型トラックに積み込み

今の街でも、後生大事に使っている。

1つの可能性が消え、新たな可能性が現われ、今の現実がある。

そう、この話は可能性の話だった。

とてつもなく途方な、フィクションだった。

だが、フィクションは、必ずしもありえないわけではないだろう。

所詮は人の空想だ。

まだ、僕らが目撃していないだけで、

これからあり得る可能性だってある。

結局は、可能性なんだ。

この物語、特に2巻はあらゆる場面が可能性に満ちていた。

僕には、そう思えてならなかった。

どこかの誰かの行動が、全てを変える可能性があった。

しかし、誰もが本音を押し留めていたようにしか見えなかった。

結局そんなところが、一人の少女の可能性を

一本道へと狭めてしまったような気もしてならなかった。

そう思うのも、僕がこの結果に納得していないだけだからかもしれない。

いや、内容自体にも納得いかないからかもしれない。

SFとうより、ミステリーっぽくなっているし

一巻で最も好きだった、多くのSFの物語の言及も皆無。

ラストは、完全にスタンド・バイ・ミーだった。

それでも、憎みきれないのは僕がSFも好きだってことと、

やっぱり、おもしろいと思ったからだ。

Anywhere but here(ここ以外のどこかなら)

そういう可能性を思いながらも、

僕は、今あるものや、この場所をも大切にしたいと思う。

例えば、ずっと使っている自転車。

これは、もうなかなか捨てられそうにもない。

きっと、僕はコイツと年を取っていくんだろう。

どちらかが、置いてけぼりにしないかぎり。

愛するものを手に入れて、そいつと一緒に年をとれ。
なるほど、これは僕にとっても魔法の呪文だ。

過去に戻るのは、それをもう一度取り戻すため。

未来に向かうのは、それをつかむため。

そうやって今を、大事にするのだろう。