「東京物語」

東京物語  東京物語

哀愁。

まさに、そんな一言が浮かぶ。

小津安二郎、「東京物語」を初見。

東京へと息子や孫を見に出て来た老夫婦。

しかし、孫は愛想なく、子どもたちも昔と違ってしまっている。

さらには、自分たちは邪魔者のように扱われる。

まあ、実際そのように扱われているわけではないが、

そんな様子は、誰だって気づくだろう。

そして東京から帰ってまもなく、その夫婦の老婆が死んでしまう。

なんというか、周りの冷たい空気。

実の家族たちも今の生活を優先して、

悲しみはするが、あっさりと引き下がる。

だけど、家族でもないのに誰よりもその老夫婦に優しくした

老夫婦のすでに死亡した、子どもの未亡人だけが最後まで心配をする。

ものすごい人間ドラマ。

静かで、ゆったりして、消え入りそうなほど淡々とした人間ドラマ。

ありきたりで、想像できそうな日本の家族や社会を描いているのに

もう、今の世の中にはないような気がする。

だけど、間違いなく少しでも、見栄えが変わってとして残っているはず。

消えているようで、残っているそんな気がした。

最近そういう古き良き日本の映画が良く出るが

これは、そんな古き良きってものじゃない。

一種の社会への反抗のようなものさえ感じる。

最後まで、そんなものじゃないと言いたいけど

実際そういう風になってしまうのじゃないかと感じてしまう。

もちろん、自分だって。

いつか自分もそういう風に、

他人より自分の生活を最優先して生きていくだろうと語った未亡人と

煙を吹き通り過ぎる船が、最後まで哀愁を誘った。

名作と名高い映画だったけど、

確かに、見といて損はない。

名画っていう雰囲気の、素晴らしい映画だった。