「ワールド・トレード・センター」

先日、ヤンキースの選手が乗った小型飛行機が、

高層アパートに突っ込んだ。

場所はNY。向こうの時刻では11日だった。

誰もが、あの事件を思い起こしただろう。

先月の11日は、ちょうどあれから5年たった。

僕は、そんな日に一本の映画を観にいった

ワールド・トレード・センター

僕は友達と観にいったが、見終わった後、しばし無言だった。

思い出したんだろうか?

僕は、5年前、自分の部屋でテレビを見ていた。

何の番組を見ていたか覚えていないが、

急に、映像が切り替わり、2度目の映像は生放送だった。

誰もが思っただろう、これから世界はどうなってしまうのか。

この映画はおもしろかったとかそういう映画ではなかった。

忘れないでいるため、犠牲になったものを思うため

あの悲劇をもう、起こさせないため。

実際にあの事件に関わった人の実話を基にした映画だった。

柳川時夫さんの「余禄」によるコラムで

むごく、理不尽な運命は、

時にそんなふうに人を強くするのだろうか。

という、言葉があった。

これは、拉致事件の曽我さんに対する記事のことだが、

この映画で、被害者のレスキューに向かい

第二派に巻き込まれた警官の姿を見て、そんな言葉を思った。

僕は、年月に経つにつれ、9.11のことを忘れてきている。

だけど、その時期が近づくにつれ、思い出す。

正直僕の中では、9.11より強く心に刻まれたことが他にもある。

だけど、あの事件は、鮮明に思い出させられる。

あの戸惑いと、怒りと、悲しみと恐怖を。

そんな思いを、起こさせる映画だった。

この映画では、実際に貿易ビルに突っ込む飛行機の映像は出てこない。

それが逆に、僕の中であの映像を強く心に映し出した。

忘れたい出来事だけど、忘れてはいけない出来事だったんだ。

NYの人たちは、この映画を直視できるのだろうか。

せめて僕らは、忘れないように見ておくべき映画だと思う。