『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三

厭魅の如き憑くもの 厭魅の如き憑くもの

“まがまがしい雰囲気”

表紙からして感じられるが、

おどろおどしい、ジメジメする、不気味など

怪しげな空気をかもし出すホラーミステリー

恐らく昭和初期~中期辺りの時代設定で、

怪しげな風習の残る閉鎖的な地域社会。

その集落は、囚われているとも読み取れる。

それだけでも怪しげな空気がプンプンなのだが、

作者が後に、「神の視点」とも例えた文章の部分が、

より一層、和風ホラーの真骨頂とも呼べるような

まがまがしい雰囲気を作り出している。

正直、かなり怖い。

そして、こういう文の作りかたは、かなりおもしろい。

上手いな~って感じた。

ミステリーなので結末は出ている。

探偵の役割を果たす主人公が、謎を解く場面は

京極堂シリーズの憑き物落としを連想させるが、

本当に憑き物は落ちたのかどうかでさえ、定かでない。

謎解きの場面は、二転三転としているので

カタルシスに欠ける気がして、

それが一層不気味で、おどろおどしく感じる。

果たして、これが結末なのかという印象を受けた。

それだけ、まだ何かありそうと思わされる小説だった。

まさに、囚われているというイメージを受けた。