『Over Drive』 安田剛士

オーバードライヴ (1) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3581巻))

はっきり言って、この漫画は苦手だ。

絵も、キャラクターも、自転車という題材も

嫌いじゃないし、むしろ好きな部類なのだけど、

ものすごく、胸をしめつけられるような気がして、読んでて苦しい。

序盤こそ、そうでもなかったけど、徐々に重たくなってきて

ますます、そんな風に感じた。

たぶん僕が大学4年で、完全なモラトリアムの終わりの期間ってことや、

死ぬ気で燃えたモノが、今まで無かったということが理由だと思う。

そう、眩しすぎる。

漫画ならば、そういう眩しさに憧れて、

そこを登場人物に自分を照らして楽しむというのが、

今までの僕の、漫画の楽しみ方の一つだった。

だけど、この作品は眩しすぎて手に触れられない。

この漫画のヒロインも、そんな眩しさに嫉妬するような人物だが、

同じような気がしている。

とまあ、このように感じるのだけど、

それ以上に、とても熱くなるものが、この漫画にある。

それは、昔亡くしてしまったものなのか、

それとも、まだ見つけていないものなのか。

そして、誰よりも速くなりたいという気持ち。

「誰よりも」という。

夢見る気持ちが、自分の中で奮い起こる。

そんなこんなで、苦手で苦しいのだけど、

僕にとって、好きな作品になっている。

たぶん、僕が夢見る、一つの形。

そういえば、この漫画は多くの対比がある。

夢中になれるものがある人と、無い人。

天才と努力家。

自分のために走る人と、他人のために走る人。

全てを背負う人と、捨てた人。

あきらめた人と、あきらめない人。

白と黒。

左右対称で表裏一体の関係。

ものすごい離れているようで、実は近いかもしれない関係。

誰しもの、心の表と裏を描いているような作品だとも思った。

ロードレースの漫画なのでけど、

それ以上に人間ドラマなんだと感じた。