『新編日本の面影』ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)

ハーンといえば、耳なし芳一。 その程度の知識しかなかったけど、 ある時、民俗学で妖怪に関するレポートを書いていたとき もっと詳しくハーンを知った。 そして興味を持ったので、去年の夏に島根に行ったとき ラフカディオ・ハーン、日本名で小泉八雲の縁の地を訪ねていった。 色々写真も撮ったけど、携帯落としてデータが消えました。 まあ、その小泉八雲旧居で買ったのが、この本。 簡単にいえば、ハーンが日本にやってきてからのエッセイ集。 『日本の面影』の中から抽出されたアンソロジー。 特に気に入ったのは、 「神々の国の首都」「日本の庭にて」「日本人の微笑」 たぶん、ハーンと今の日本人は似た気持ちがあると思う。 古き良き日本への憧れ。 自分の中の世界になかった、別のところにある不思議な世界。 オリエンタリズムというのだろうか。 東洋の小さな島国に確かにあった、風習とか習慣といったもの。 とっても美しく感じているのだと思う。 近代化、欧米化が進んで、どんどん豊かになった。 普通に考えれば、メンドクサイこのうえない当時の生活。 それでも惹かれるものがある。 僕が夏に旅行に行ったときも、古い神社とか遺跡とか、建物。 他の人に、何が楽しいのと言われるような所を回ったのは、そんな理由。 この本を読んでいてうれしいのは、外国人だったハーンが 当時の日本のことを、ものすごく愛してくれていること。 日本人として、それはとてもありがたい。 そこまで言ってくれなくてもと思うくらい溺愛している。 まるで御伽の国にやってきた旅人みたいだ。 いや、実際本当に御伽の国にやってきたと思っているんだろう。 そのせいか、欧米の国の文化をけなすような表現があった。 海外の人が読むと不快感を感じるのも当然だと思うほどの。 でも、それだけ日本を愛してくれてうれしい。 そして、ごめんなさい。 なぜ、ごめんなさいかというと、文中でハーンも感じていたように、 古き良き、日本の文化・風習が、無くなっていく。 欧米化してしまったということだ。 これも時代の流れなので、しかたない。 しかたないけど、残念だったと僕自身も感じた。 だからといって、その当時のような生活などできない。 結局、そういう時代になったということだ。 悲しいけど、しかたがない。 でも、普段の生活に古くからの文化が残っている部分もある、 正月やお盆など特別な行事などでは、 特に強く日本の文化を、日本人であることを感じられる。 知らない人から見れば、奇妙なことこの上ないだろし、 無くなっても、差し当たりないようなことかもしれないけど、 そういうことが残っているということは、良いことなんだろう、きっと。 そしてハーンがもう一つ感じていた、日本人自身の美徳。 そこだけは、消えても仕方ないとか思いたくない。
新編 日本の面影 (角川ソフィア文庫)
ラフカディオ ハーン Lafcadio Hearn 池田 雅之
角川書店 (2000/09)
売り上げランキング: 9398
おすすめ度の平均: 5.0
5 本当に美しい国へいらっしゃい
5 贔屓にあらず。
5 親日家が見た幽玄の国