『犬はどこだ』 米澤穂信

犬はどこだ (創元推理文庫 M よ 1-4) 犬はどこだ

何か自営業を始めようと決めたとき、

最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。

しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。

そこで探偵事務所を開いた。

この事務所<紺屋S&R>が想定している業務内容は、

ただ一種類。犬だ。犬探しをするのだ。  本文より

一応探偵小説だけど、こんな調子な探偵です。

タイトルが犬はどこだ。

犬を探しているように思えるタイトルだけど、

関係ない事件が舞い込んでしまい、

主人公の心情吐露のようでもある。

さて話は、2つの視点で進んでいっている。

犬を探したい探偵というか、他に呼び名がないから

探偵に納まっている主人公。

そして探偵志望の主人公の後輩兼、紺屋S&Rの一応所員の半田。

2人の請け負う2つの事件が、それぞれ別物だが、リンクしてくる。

しかし、互いに状況報告していないので、

2人が、事件の関係性に気づかないことがもどかしくも、

おもしろくも、これからどう気づいていくかがおもしろい。

そんなわけで、上手く話しがかみ合っていかないだけに、

物語も一筋縄では進んでいかない。

様々トラブルであったり、横道にずれる箇所が出てくるが、

その一つ一つが、たった一つの事件を解決するための道になっている。

「犬はどこだ」何て言っている間もなく事件は進む。

しかし、主人公は実質探偵ではない。

事件を解決する存在ではない。

解決するのは犬探しで、サーチ&レスキューなのだ。

犯罪を鮮やかに解決する名探偵役ではない。

そんな彼の最初の事件。次に期待です。