『犬はどこだ』 米澤穂信
何か自営業を始めようと決めたとき、
最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。
しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。
そこで探偵事務所を開いた。
この事務所<紺屋S&R>が想定している業務内容は、
ただ一種類。犬だ。犬探しをするのだ。 本文より
一応探偵小説だけど、こんな調子な探偵です。
タイトルが犬はどこだ。
犬を探しているように思えるタイトルだけど、
関係ない事件が舞い込んでしまい、
主人公の心情吐露のようでもある。
さて話は、2つの視点で進んでいっている。
犬を探したい探偵というか、他に呼び名がないから
探偵に納まっている主人公。
そして探偵志望の主人公の後輩兼、紺屋S&Rの一応所員の半田。
2人の請け負う2つの事件が、それぞれ別物だが、リンクしてくる。
しかし、互いに状況報告していないので、
2人が、事件の関係性に気づかないことがもどかしくも、
おもしろくも、これからどう気づいていくかがおもしろい。
そんなわけで、上手く話しがかみ合っていかないだけに、
物語も一筋縄では進んでいかない。
様々トラブルであったり、横道にずれる箇所が出てくるが、
その一つ一つが、たった一つの事件を解決するための道になっている。
「犬はどこだ」何て言っている間もなく事件は進む。
しかし、主人公は実質探偵ではない。
事件を解決する存在ではない。
解決するのは犬探しで、サーチ&レスキューなのだ。
犯罪を鮮やかに解決する名探偵役ではない。
そんな彼の最初の事件。次に期待です。