『やっぱりおおきくなりません』 白倉由美
『おおきくなりません』の続編で完結。
大人になるための童話みたいなイメージの、
あったかくて、甘くて、陽炎のように儚い話だった。
「おおきくなること」つまり大人になること。
結局答えなんてなかった。
あってもそれはとても曖昧で、
それぞれの心の中にあるんだなと感じた。
僕がこの物語で好きなところは、
必死におおおきくなろうと努力しているところだ。
まるで少女のような引きこもり暦10年の35歳。
現在女子大生になりましたの、このヒロインというか、
主人公が、このままじゃダメだとおおきくなろうとしているところだ。
そして、彼女がこんな言葉を発した。
「ねえ、月夜さん、私、少しはおおきくなったのかなぁ」
それに対して、この月夜が返した言葉が
「そうだなぁ。でも僕は
いつもおおきくなろうと努力している麻巳美が好きだよ」この会話が、この物語の全てなのかもしれないと僕は思う。
たぶん人はずっと少しずつおおきくなっていく。
永遠に終わらない螺旋のように、ぐるぐる回っているようで、
少しずつおおきくなっていく。
そのための努力をやめてしまったら、おおきくならないかもしれない。
見た目ばっかりおおきく変わっていっても、心は変わらない。
でも、色んな出来事があって、人は変わっていく。
おおきくなっていく。
改めて、人間って良いものだなぁと僕は思った。