『やっぱりおおきくなりません』 白倉由美

やっぱりおおきくなりません (徳間デュアル文庫 し 2-2)やっぱりおおきくなりません

『おおきくなりません』の続編で完結。

大人になるための童話みたいなイメージの、

あったかくて、甘くて、陽炎のように儚い話だった。

「おおきくなること」つまり大人になること。

結局答えなんてなかった。

あってもそれはとても曖昧で、

昔々の通過儀礼を通ったとしても、結局それはただの儀礼で、

それぞれの心の中にあるんだなと感じた。

僕がこの物語で好きなところは、

必死におおおきくなろうと努力しているところだ。

まるで少女のような引きこもり暦10年の35歳。

現在女子大生になりましたの、このヒロインというか、

主人公が、このままじゃダメだとおおきくなろうとしているところだ。

そして、彼女がこんな言葉を発した。

「ねえ、月夜さん、私、少しはおおきくなったのかなぁ」
それに対して、この月夜が返した言葉が

「そうだなぁ。でも僕は

いつもおおきくなろうと努力している麻巳美が好きだよ」

この会話が、この物語の全てなのかもしれないと僕は思う。

たぶん人はずっと少しずつおおきくなっていく。

永遠に終わらない螺旋のように、ぐるぐる回っているようで、

少しずつおおきくなっていく。

そのための努力をやめてしまったら、おおきくならないかもしれない。

見た目ばっかりおおきく変わっていっても、心は変わらない。

でも、色んな出来事があって、人は変わっていく。

おおきくなっていく。

改めて、人間って良いものだなぁと僕は思った。