『おおきくなりません』 白倉由美

おおきくなりません (徳間デュアル文庫 し 2-1)おおきくなりません

今日は休日だったので、遠くまでドライブがてら

書店を5軒ほどハシゴしてきた。そのうち、古本屋1軒。

買った本が、計8冊。

そのうち、まったく作者も話も知らないで買ったのがこの本。

『おおきくなりません』

自分のアンテナにピーンと来て購入。

もう大人と呼ばれる年齢に達したkakasiが思うこと。

おおきくなってなんかいません。

小さい頃は、大人っていうのは、もう無条件で大人だった。

社会人であるとか、結婚しているとか、関係なく、

その人が何を抱えているとか関係なく、

ただ、そう感じていた。この人は大人だと。

第一印象ってやつかもしれない。

自分の両親の子供の頃とか想像もできなく、

ずっと父さん、母さんと思っていたように。

そういう意味では、初めてあった時、

お兄さん、お姉さんと感じた人は、もう大人になっているのに、

今だ、お兄さん、お姉さんと思ってしまうことと同じかもしれない。

話がそれてしまったが、『おおきくなりません』

買ったその日に、ゆっくり風呂の中で、

最近買った防滴CDプレーヤーで、

レディオヘッドの「In Rainbows」を聞きながら、

実におだやかな気分で読むことができた。

おおきくなることは、僕にとって性急な問題。

ちいさいままな方が、楽なことはわかりきっているけど、

もう、楽なままではいられないし、守られてもいられない。

僕は男なので、守ってやるよなんてこれから言われることなんてない、

むしろ言わなきゃいけない立場なのだが、

精神的に、まだまだおおきくなっていない。

本当に、いい年こいた大人になってきているのに……

この物語では、特に子供のままではダメだとか、

子供の心を持っておおきくなっているとか、

そういう風には感じなかった。

ただ、どこか欠けた心を持っている大人の話。

というよりか、大人になり損ねたというべきか。

いや、大人なんだけど、成熟はしてないというべきなのか。

そして、この世界観もどこか不思議めいている。

非現実とまではいかないが、夢の世界にいるよう。

漫画の世界のよう。

読み終えて調べたら、作者は元少女漫画家で、

この小説は私小説の一面も持っているそう。

おおきくなるための道は、なんとなく僕にもわかっている。

だけど、どうしてもちょっと横道にそれてしまったり、

昔のことが気になって、後ろに戻ってしまったりする。

わかっているけど、できない。

でも、少しずつ進んでいるような気がしないでもない。

おおきくなってしまうと、世界がちょっとずつ、

暗くなってしまいそうという思いが僕には少しだがあった。

知るということは、素晴らしいことだけど、

実に暗いものだって世の中にあるわけで、

何も知らない頃の方が幸せなようにも思えていたからだ。

でも、この本を読み終えたら、

日が差し込むように明るい日常が待っていてくれそうな気がした。