『朝霧』 北村薫

朝霧 (創元推理文庫)  朝霧

前作の『六の宮の姫君』で、いい最終回だと思っていたら、

続きがありました。

私は、学生を卒業して社会人に。

確実に流れていく時間の流れに、ゆっくり一歩ずつ踏み出していく。

同じように、僕も学生を卒業して社会人に。

昔の友達とはなかなか会えない。

私と正ちゃんの描写には、僕とある友人を重ねてしまう。

四六時中一緒などということはない、お互い気ままに学生生活を過ごしていた。

でも、大事な時は一緒にいた。

先月、会社の都合で大学のあった県に戻ったとき、

久しぶりにその友人とあう時間ができた。

思い出話はあまりしない。お互い今を見ている。

昔話があっても、それは今に繋がっている。

だいぶ時間が過ぎたんだなぁと感じた。

楽しい時間だった、そのことは今も昔も変わらない。

話は戻って、小説のことに。

学生の私から、社会人の私に代わったが、

基本的なことは変わっていない。

感受性豊かで、ささいなことで傷つきやすそうで、

好奇心豊かな私の物語だ。

日常の謎」というものがこのシリーズの醍醐味。

普通なら、そのまま通り過ぎてしまうようなことが、

このシリーズではミステリーになる。

「山眠る」

「走りくるもの」

「朝霧」

この3編。悪意の強いものはないが、

考えてみると、悲しく切ないものがある。

「朝霧」に関しては、まさに私のミステリーだと感じた。

この謎について円紫さんが、あなたが御自身で確かめた方がいいと言い、

普段探偵役となる円紫さんが、謎を解かない。

だんだん私が、先へと歩いていく気がする。

私が、おおきくなっていく気がする。

次回作への期待を持たせる終わり方だったが。

今だ、次回作は出ていない。

読者が、本を深いものにする。

だから、本を読むことは楽しい。そうじゃありませんか

作中でこんな言葉があった。

いつまでもまっていよう。

私も、僕もまだまだ、これからだ。

それに、このシリーズを読むのは、とても楽しい。

そして最後に思ったこと。

本当にいいものはね、

やはり太陽の方を向いているんだと思うよ

この言葉が、とても印象深かく、私が成長していくこんな物語が好きだ。