『青空の卵』 坂木司

青空の卵 (創元推理文庫) 青空の卵

自称引きこもりの友人を持つ、作者と同名の坂木司が、

身の回りの謎を、その引きこもりの鳥居と解いていくという物語。

以前読んだ、北村薫の「円紫さんと私」シリーズのような

日常の謎と同時に、人との繋がりを強く意識付けられる話だった。

ただ、北村さんの作品と違って、青臭さが見える。

北村作品も、青臭いと言えば、青臭いが、

こちらは、さらに強い。いい年した男が主役なのに。

そこが純粋で良いという人もいるだろうが、

あんまり僕は、好きではない。

ドライな言い方だが、依存しすぎている。

でも、これはシリーズもので続編があるので、

その辺りは、解決すべき問題として重く圧し掛かるだろう。

話は面白いし、心温まるのだけど、

どうしても甘ったるい。

人が優しすぎるし、純粋すぎる。

人を疑ってかかるのは悪いのだけど、

僕には、あまり信用できない、こういう人達は。

もうちょっと、深い心情部分まで書き込んでくれれば納得するが、

なかなか、難しい。信用するということは。

でも、主役の坂木の心情はわかる。

彼はごく普通の人間だ。

打算で動くし、人の言葉で、自分を変えようとするし、

臆病であり、すぐに動揺する。

本物になりたい。
何のという言葉は野暮だと思う。

僕も本物が欲しい。

僕だって、本物になりたい。

自分というものが、パーソナリティーだけで決まるのでなく、

他人、場所、本、音楽などの様々な価値観や環境で、

変えられるものだって信じたい。

僕はまだ、殻はやぶれない卵みたいなものだ。

僕は、本物になりたい。