『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS)  モダンタイムス

最近金欠なので、宮部みゆきの新作か、この本を買うかで迷いに迷った。

勇気はあるか?

開いた最初のページで飛び込んできた一文。

僕の場合は勇気を実家に忘れてきたわけでない。

ここだけの話、僕の名前もユウキだ。

勇気なんてそこかしこで使われる題材なので目新しくもない。

でも、僕にとってユウキとは一生向き合い対決していくものなので、

もういっちょうユウキの物語と対決してみるかという気分で購入。

ちなみに、押し絵のついた版が売っていることは、

この本の最後の後書きで知った。

ああ…『ボーイズ・オン・ザ・ラン』好きなのに……

モーニングでの伊坂小説連載は知っていたけど、読んでなかったし、

最近、ダ・ヴィンチなどの本の雑誌も読んでないので、

内容はまったくしらなかっただけによけいに楽しめた。

読んでいて、おやっと思う一文が出てくる。

安藤潤也、犬養という名前が出てくると、

ああ…魔王の続編だったんだと嬉しい気分になった。

これまで、伊坂作品がいくつかリンクしているのはよくあったけど、

ここまで純粋に続編と言えるものはなかった。

魔王、呼吸、そしてモダンタイムという、

大きな力に立ち向かう三部作といったところなのかな。

終わり方を見るともう一作入れて四部作でもいいかなと思える。

対決していくなら。でも見てみぬふりも勇気なのか。

そうだとしたらこれでおしまいでも納得。

『チルドレン』でだったと思うけど、

パンクロックとは立ち向かうことだという言葉があった気がする。

このモダンタイムスの主人公は逃げ回ってばかりだったけど、

最後の最後には対決していく。

世の中の流れに立ちむかおうとしていく。

いや、ただ小さな目的のために立ち向かったのかもしれない。

モーニングという漫画雑誌に載っていただけに、漫画的な展開だ。

これまでも漫画的な部分は多かったけど、この作品は実に漫画的。

覚悟はできているか?勇気はあるか?考えろ考えるんだ……

色んな言葉が頭に浮かんでくる。時に情景が溢れてくる。

僕には、物語のクライマックともいえるシーンで、

見たこともないはずの安藤兄が見えた気がした。

これまでの伊坂作品のように複線による、

大掛かりなどんでん返しがあったわけでもないけど、

小粋な複線による、展開がなんとも言えない。

そして最後の複線となる最初に出てきた

勇気はあるか?
結局主人公の妻のことはわかりにくかったけど

こういうケースもいいじゃないかと思えた。

主人公の答えは「勇気は彼女が」

その続きを聞くと、僕もにやにやしてしまう。

関連作品感想リンク

『魔王』 

『チルドレン』