『タイムスリップ明治維新』 鯨 統一郎
鯨 統一郎のタイムスリップ2作目。
前回は森鴎外が現代にやってくるというものだった。
そこで鴎外がオレンジ色の髪の少女に助けられ、
元の時代に戻る方法を探すというものだったが、
今回はその鴎外を助けた少女が明治維新の始まる頃、
つまりは幕末にタイムスリップするというものだった。
どちらかと言うと、前作の方が好きなんだけど、
自分が幕末が大好きなので楽しんで読むことができた。
それにしても作者は前作でも『燃えよ剣』が出たし、
今回は『竜馬がゆく』が出てくるし司馬遼太郎好きなんだろうかな。
彼らが、激動の時代を駆け抜ける
……というものとはちょっと違った趣があった。
主人公の少女の目的は、現代に戻ること。
鴎外の時は、自分を暗殺しようとした人物を判明させることが、
元の時代に戻る方法になっていた。
今回は、明治維新を起こした黒幕は誰かを探し出して、
正しい時代に進むように、自分たちが動いていくというもの。
未来からやってきたある人物が歴史を変えようとしていることを防ぐこと。
冒険譚であって謎解きのミステリー。
未来の人間が過去に行って歴史を変えてしまうというのには、
タイムパラドックスが付き物なんだけど、
この物語ではそれほど深刻でもなかった。
いや、深刻といえば深刻なんだけどそれほど切羽詰ったものとも感じられなかった。
なので、ちょこちょこ歴史を変えながら、正しい歴史の本流に乗せるという話に。
ラストでは鴎外の物語のように、やっぱり歴史は変わっている。
ありえないけど、これも一興。
おもしろき こともなき世を おもしろく
教科書通りでは面白くない。
型どおりの幕末の小説を期待していたわけでもないし、
こういった楽しみかたが出来るのもいいかなと思えた。
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