『邪馬台国はどこですか? 』 鯨 統一郎

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫) 邪馬台国はどこですか?

歴史ミステリーというジャンルなんだろうけど、

完全なる卓上の上での論議

ただ歴史の謎を飲み食いながらディスカッションしてるだけなんだけど、

これがなかなかにあなどれない。

タイトルの邪馬台国はどこですか?

という疑問には、邪馬台国は東北だと真顔で答え、

さらには岩手だと、有名な九州、畿内説を一蹴。

そんなまさかと思い読み進めると、

あながち有り得なくもないと思えてしまう、妙に説得力がある語り口に、

こちらもどんどん引き込まれてしまう。

「んな、馬鹿な!」と笑い飛ばしていたはずだが、

イメージはいつしか馬鹿話から離れられなくなり、

どんどん膨らんでゆく……

なんとも不思議な感覚に陥るのである。

という橋本直樹さんの解説がピッタリと当てはまる。

邪馬台国はどこですか?という邪馬台国論争の他にも、

後の鯨さんのタイムスリップシリーズに繋がる、

ブッダに関する「悟りを開いたのはいつですか?」

明治維新に関する「維新が起きたのはなぜですか?」

という、タイトルから図れない方向へと議論が進む内容などの、

豪華な短編6本。

個人的に好きというか驚きだったのはキリストの神秘に迫る

「奇蹟はどのようになされたのですか?」

こういう発想は今まで持ったこともなかったけど、妙に納得させられる。

同じ点では、戦国時代最大の謀叛劇「本能寺の変」を題材にした

「謀叛の動機はなんですか?」も侮りがたし。

こういう歴史ミステリーを解いていくものでは

井沢元彦さんの『逆説の日本史』を昔読んだとき、衝撃的だったけど、

こちらは、もっとフランクに読めるので、

お手軽なんだけど、なかなかに内容が濃い。

続編はもうすでに読んでしまっているのが惜しい……

他にはこのシリーズの本は出てないのかな…

関連作品感想リンク

『新・世界の七不思議』

『タイムスリップ明治維新』

『タイムスリップ釈迦如来』