『愚者のエンドロール』 米澤穂信

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫) 愚者のエンドロール

古典部シリーズ第二弾は、未完全な映画の結末を考えるというものだった。

作者は、バークリーの『毒入りチョコレート事件』への

愛情と敬意を持って書いたと語っているが、そちらは未読なので、

僕は、純粋に米澤穂信の一つの作品として読んだ。

今回は一冊まるまる、映画の結末を推理することに費やしていて、

読んでいても推理に熱が入る。

ああでもない、こおでもない。

そう考えながらも、物語に没頭してしまい、

僕としては推理はそっちのけになってしまった。

そうなるほど、面白い話だ。

クラスの文化祭のミステリー映画を作っている最中、

脚本を担当する女生徒が心労で倒れてしまい、撮影は中断。

よって映像は、一人の被害者が出たところで終わってしまう。

結末はもちろん、犯人もわからない。

その映像の続きを作るために、主人公の奉太郎ら古典部が推理していく。

脚本の女生徒がいっさい語らないので、これはわからない。

限られた映像だけで、謎を解いていく。

わからない。わからないから、気になる。

わたし、気になります
古典部シリーズの常套文句が出てくるわけだ。

そして青春小説としても、やっぱり機能していて、

薔薇色に憧れる、灰色な主人公が、自分の価値を認めるために、

苦心して出したその答えが、エンドロールへと繋がる。

これがまた、せつない。

心を痛めた女生徒の本当のエンドロールは何なのか。

僕も、とても気になります。いや、気になりましたと言うところか。

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