『氷菓』 米澤穂信
米澤さんのデビュー作であり、後にシリーズモノと続いていく
英語でYou can't escapeと小さく振ってある表紙の写真は、どこかの学校だろう。
古典部と名が付くだけに、高校生の話で、ミステリー。
いわゆる、日常の謎というもの。
派手さはないけど、見方しだいでは、とても面白しい。
ミステリーなんだけど、高校生活が舞台であるので、
必然的に青春小説のような、雰囲気を持っていて、無気力というかやらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことは手短に。が、モットーな少エネな主人公といえども、
灰色なんかではなく、どこか青い春のようで、つまりは青春している。
別に、スポーツをしてるわけでもないし、恋愛してるわけでもないし、
個性的な周囲に引っ張られ、なし崩し的に、しぶしぶになのだが、
本人的には意外と気分悪くということもなさそう。
古典部なのに、古典には興味なく、姉の進めで入部しただけで、
みずから事件に突っ込むこともない。
だけど、どこか楽しんでいるとまでは言わないが、
悪くないといった感じで、逃げられないこの状況を受け入れているようにも感じた。
そして、だんだん自分の意識が変わっていることも受け入れている。
つまりは成長しているっていうことで、
その辺りが、やっぱり青春小説のように思える大きな部分かと思う。
もちろん日常の謎ミステリーとしても、楽しめる。
北村薫の「円紫さんと私」シリーズと似た印象。
小さな事件が積み重なって、
最後のタイトルにもなる「氷菓事件」は、この物語の集大成であり、
その解決は、古典部メンバーの皆の作品と呼べると思う。
まあ、実際作品になるのだけど、その辺りは次巻で。