『99%の誘拐』 岡嶋二人

99%の誘拐 (講談社文庫)  99%の誘拐

さっそうと行われる誘拐劇。

けっこう厚めの本だけど、スピード感があり、

余分な部分を削り、その誘拐劇をかろやかに書いているので、

劇中の誘拐方法、そして身代金の受け渡しのように、

あっという間に、テンポ良くページがめくらされた。

ある誘拐事件から時代を経て、新たに同じような誘拐事件が起きる。

犯人には、強烈な悪意は感じ取れなかった、むしろ悲哀が感じられた。

しかし、誘拐とは卑劣なものだと思う。

だけど、僕が犯人と同じ立場だったら、責めきれない。

僕が傍観者としてなら、その誘拐に軽蔑をするだろう。

でも被害者側だとしたら、責めきれない。

誘拐された人物の心境を思えば、やっぱり許せないが。

そんな事件を書き上げているが、僕が好きなところは、

物語の1章を務める、最初の誘拐事件。

スピーディーでスタイリッシュな2つ目の事件もいいが、

2つ目の事件を知りえた後でもう一度読み返すと、

また、面白いと言ったら不謹慎だけど、

物語の掴みであり核であり、全ての象徴のように思えた。

読み終えて、これでいいのだなと問われたら、

いいわけないと答えたいが、

これもある種の解答なんだと思う。

だけど、全てが間違っていると答えられなくもない。

とても複雑な気分になった話だった。