『鬼のすべて』 鯨統一郎

鬼のすべて (光文社文庫)  鬼のすべて

鯨さんの作品といえば、ブッ飛んでいるが、

その独自の解釈から織り成す歴史の解釈が、たまらなく面白く、

どこか信じてしまいたくなるものばかり。

これまで読んできたものは、上記のような、

独自の歴史解釈を生かすための話の組み立て、

つまり、小説として物語を生かす、キャラクターを生かすより、

その歴史解釈のためのお膳立てのための小説というイメージが強かった。

しかし今回は、表紙から想像もできない本格ミステリーになっている。

ただし、本格ミステリー風味だったのだけど。

やっぱり、本命となっているのは鬼であり、

歴史というより、民間伝承の謎解き。やっぱり、鯨さんだな。

刑事の渡辺みさとは、友人の若江世衣子の死体を発見する。

それはあたかも鬼に見立てられた死体だった。

直後、鬼と名乗る犯人から犯行声明文が送られてきた。

「日本から鬼を消す」という言葉を残し

警視庁を去った男・ハルアキとともに、

みさとは鬼の正体を追う。

少しオカルト染みているが、あらすじだけは普通のミステリー。

事件の謎と共に、民間伝承上の鬼という概念の謎を追っていく。

二つの謎が、しだいに交差する様は、若干力業であるけども、

鬼に関するその解釈は、聞いたことがなくもないが、

その消し方、伝染の仕方というものが、鯨さんらしいな~と。