『秋期限定栗きんとん事件 上・下 米澤穂信』

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫) 秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

この時期に秋期限定というタイトルの本が出るのはいかがと思うが、

待ちに待っただけに、やっぱり嬉しいもの。

『夏季限定トロポカルパフェ事件』で相互関係解消をし別れた

小鳩君と小佐内さんのその後を上・下巻で書いたこの秋期限定。

さてさて、二人の再開はあるのだろうか。

小市民を目指す小鳩君と小佐内さん。

2人でいることにより、

決してその目指す小市民まで届かないと思い知らされ、別れた二人。

前作の『春季限定』『夏季限定』では二人でいることが当たり前だったが、

今作では、二人が一緒にいないどころか、

お互い別の恋人を作り、別々のパートで進んでいく。

そして今回起こる事件は放火。

放火魔事件をメインに添え2人の秋から次の秋までの1年が始まる。

やっぱりファンとしては、お互いが別の異性といる。

仲良くかどうかわからない空気が漂っているが、

それだけで変にやきもきさせられる。

そんな甘酸っぱい思いも感想になるが、

やはり肝は、小市民というものと二人が向き合うことになるのが、

今作の一番の見どころだと思う。

二人とも感情を出さないので、読み取るのが難しい。

でも、言動からなんとなくわかる。

そして小市民というもの、

何より小市民に憧れた自分自信、

小市民になることで得られるものを、本当に掴むために

必要なものとは何かということを知るまでに至るプロセスが、

一年かかってやとぐるりひとまわり。

小市民というシリーズでくくるなら、これで完結がベストだろう。

あと残るのは、高校生活にさよならを告げ、

学校から離れた二人の関係をどうするかだけだと思う。

秋期限定栗きんとん事件』決して甘ったるくなんかなかった。

長いこと仮タイトルだった『秋期限定マロングラッセ事件』

から、タイトルが変わったのは正解だろう。

二人が周りに芯まで漬け込み染められるなんて考えられないから。

関連作品感想リンク

『春期限定いちごタルト事件』

『夏期限定トロピカルパフェ事件』