『屍鬼 1~5巻』 小野不由美

屍鬼〈1〉 (新潮文庫)屍鬼〈2〉 (新潮文庫)屍鬼〈3〉 (新潮文庫)屍鬼〈4〉 (新潮文庫)屍鬼〈5〉 (新潮文庫) 昭和ミステリの舞台を思わせるような小さな村が舞台。 でも、現代が舞台で人物も若い子は現代風な設定が奇妙。 村で起こるある事件も奇妙なもので、物語はとらえどころがない。 じわじわと村に広がっていく事件は、次第に急速にスピードを上げていき、 僕としては、予想通りでもあり、 予想と違った物語の感想を作り上げていった。 村の多くの人物を語り部に扱っているうえ、 登場人物も多いので、なかなか全体像をつかむのが苦労するので、 最初の方は少し挫折しそうだったけど、 1巻を読み終えれば、圧倒的な物語の雰囲気に取りつかれたよう。 タイトルからホラーを意識して読み進めると、 もしかしたらミステリーかと考えを改められ、 いや、やっぱりホラーかと二転三転。 それは、読者だけでなく登場人物たちも同じで、 二転三転とするホラーミステリー。 あっと驚くような展開と緻密な構成、じわじわ広がる緊張感。 生と死と、善であることと、悪であること。 様々な対比から、正しい方向を見失いがちになる。 物語の人物たちも、想像できない極限状態の中で、 色々なことを見失いがちになっていく。 ある一極から見れば、正しい行動をしてるともとれるけど、 違う一極から見れば、間違っているともとれる。 物語の終幕も、正しい終わり方とは思えない部分もある。 全てが曖昧で、曖昧ながらも強い説得力を持つ物語でもある。 個々の人物の思いは難しいが、 個々の人物が集まった集団としての流れは良くわかる気がする。 この物語のように、あるものは生き残り、あるものは淘汰される。 生物の食物連鎖のような物語のようにも思えた。