『ひとがた流し』 北村薫

ひとがた流し (新潮文庫) ひとがた流し

すごくゆったりとした流れに沿うかのようなお話で、

じわりじわりと引き込まれていった。

大きな出来事が無いわけでもないけど、

終始一貫として、同じような雰囲気だった。

読む人にとっては、終盤は暗くて悲しいと思うけれど、

僕には最後まで同じだった。

人は、一生懸命生きているのだと。

その上で、多くの人に支えられてきたのだと。

この話は、一言でいえば病を抱えた

40代の女性とその周囲の人との友情の話だと思う。

一歩間違えば、これはただのお涙頂戴の物語になる。

僕は、そういうあざといのはあんまり好きでなくて、

そういうここで泣けるんだ、とちらちら見えるようなのは冷めてしまうが、

あくまで淡々と生と死を描いているのが好感だった。

そして、家族、友人、恋人の愛情が詰まっている。

生と死も明確なテーマだと思うけど、

愛情がとても強く打ちだされていると僕は思う。

女性の友情は僕にはよくわからないけれど、

この本のような関係は素敵だなと思う。

素敵だなんて普段使わない言葉だけど、素敵という言葉がしっくりくる。