『凍りのくじら』 辻村深月

凍りのくじら (講談社文庫) 凍りのくじら

ちなみに今日行った本屋ではこの本の作者の、

辻村深月フェアがやっていた。郷土作家らしい。

僕の地元では、漫画化の小山ゆうコーナーが、ず~とある。

大河の影響で小山ゆうの『お~い竜馬』が拡販されていた。

考えてみると坂本龍馬って少し不思議な人物だ。

幕末の時代での世界を見る視野と薩長同盟を成立させるバイタリティ。

剣の達人なのに銃を好む。効率を求める手腕。

と、話がずれてしまった。

今日僕が買った雑誌の中のドラえもん映画主題歌大全集の記事で

この作者の文が載っていた。

タイトルから連想できないけど、

この『凍りのくじら』はドラえもんの話であったりもする。

独特の主人公の心理描写が際立つ、女の子の小説というのがまずの感想。

八方美人でも実は孤独な女の子の物語。

だけど、みんなの前では普通というか、上手く溶け込んでいても、

自分の部屋に一人戻ると、暗くなってしまうなど、

表と裏の心があるのなんて皆そうだと思う。特に若い頃なんて。

そんな裏の心が、吐け出されている物語だから、

少し重くて、少し痛い。

だけど、少し共感できたりする。

解説では、そんな主人公に感情移入ができないと書かれているけど、

そんなことないと思うのは、僕がこの主人公よりだからだろうか。

主人公に感情移入できても、できなくても、

この物語に、取り込まれてしまうのだとしたら、

きっとそれはドラえもんのせいなんだと思う。

小さい頃は、お兄ちゃんのような、お母さんのうような、友達のような、

みんなのドラえもん

そんなドラえもんが物語と読者を繋げている、少し不思議なSF。

それがこの『凍りのくじら』なんだと思う。

この本は半年くらい前に読んで、今は実家に置いてあるのだけど、

最近実家に帰ったとき、母がこの本面白かったよと言った。

どう考えても、この本は若い人向けの話なんだけど、

もう50近い母がこう言ったのは、ドラえもんが繋いでいるからだと思う。

少し不思議なロボットドラえもんの、

少し不思議な秘密道具を引き合いにして展開される物語。

少し不思議で、少し切なく、少し感動。

そして、とても面白かった。