『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

圧倒的なボリューム感のある学園ミステリーだった。

少年少女8人のグループが物語のメイン。

というより、時の止まってしまった校舎内で、

8人のみが登場人物として進む、8人の話。

なぜ時が止まってしまったのか。

なぜ校舎内には8人しかいないのか。

なぜ校舎から抜け出すことができないのか。

なぜ8人は2ヵ月前に自殺した友達を覚えていないのか。

時計の針は、友達が自殺した時間で止まったまま動いていない。

8人は、この時が止まった校舎を抜け出す方法を探す。

こういった特殊な閉じられた空間の中でそれぞれが困惑しながらも、

校舎から脱出する方法を考えるが、

ミステリーの王道なことに、1人、また1人と人物が消えていく。

こういうの大好き。

8人の人物が、それぞれ主役かのように書かれていくので、

本当に文章量が多い。読めども進まず。

だけど、少しずつゆっくり物語は進んでいくのは、

物語の雰囲気に合っている気がする。ちょっとホラーな雰囲気に。

主人公の名前が作者と一緒なことに感情移入がしにくかったが、

ラストまでの展開は見事。長かったけど、読み応えがあった。

登場人物の関係がぴったりはまっていくラストシーンまでの流れは、

鳥肌が立ちそうに良かった。

8人のうちの菅原が良い役だった。

でも、主人公の辻村深月はあんまり好きになれない。

なんとも複雑な感想になってしまう物語で、好きだけど、苦手。

ジュブナイルな物語の青臭さと幼稚さが、

切なくも懐かしく、嫌悪感も抱かせるような、

生々しい物語だったと思うのは、僕が男だからだろうか。