『幻想図書館』 寺山修司

幻想図書館 幻想図書館

タイトルに惹かれて購入。

幻想で図書館だなんて、なんてステキな響なんだろう。

この小説は、多くの分野で活躍した寺山修司さんの見つけた

不思議で奇妙な書物の案内本。

オズの魔法使いのようにファンタジーなものを取り上げてもいるが

猟奇雑誌、怪物、拷問、マゾヒズムなどダークなことも取り上げている。

どれも視点がとてもおもしろくて、興味がつきない。

やや知識がないと、例えの部分が何のことだかわからないこともあるが

作者がすごい楽しんで書いているということが伝わってくる。

僕らが、ブログで本の感想を書いているのと同じようなことかもしれない。

もっと書きたいが、これくらいにしておこうというような表現が

たびたび出てくるのも、もっと語りたい、書きたいという現われだろう。

文中に

世界はひらかれた本である。

問題はどのように「読み取る」べきか。だ。すなわち、

本はあらかじめ在るのではなく、読者の読む行為によって

<成らしめられる>無名の形態に他ならない

という言葉があった。

図書館は蔵書があるだけでは、役割を果たさない。

人々に読んでもらって、初めて図書館といえると聞いた。

まさに、その通りだとこの言葉に感じた。

これは実際の本を取り上げているが、寺山さんの頭の中の

本の内容に関する様々な考えが、あちらこちらに散らばり

幻想的な図書館と化しているようだった。

どちらかというと、取り上げる本は主題であり

それに関する、実際の出来事や映画、テレビ、実体験が多くを占めている。

それが、まとまると見事に不思議な本になっている。

僕らの読む行為によって、書かれた奇妙な内容は

幻想図書館として、見事に機能していた。