『燃えよ剣(上、下)』 司馬遼太郎

燃えよ剣 (上巻) 燃えよ剣 (下巻) 燃えよ剣(上、下)

画像は文庫だけど、読んだのは単行本版です。

図書館に寄贈された本で、もう必要ないと廃棄されそうな本の中から

図書館のご好意もあり、譲り受けた本。

使い込まれた感があり、長く倉庫にあったのかカビ臭い、

中には丁重に畳まれた帯と、古い新聞の司馬良太郎に関する切り抜き。

新選組の足跡がする」
まさに、そんな本だった。

新選組、というより土方歳三という男の足跡だった。

男の美学。

幕末という乱世の中、その時勢に最期まで戦いを挑んだ男。

この男の貫いた美学は、果たして美しいものだったのか。

傍から見れば、滑稽に見えたのか。

死んだという言葉より、果てたという言葉の方が相応しい。

最期まで、命を剣を燃やし尽くした男は美しいものである。

そう僕は、思いたい。

フィクションとはいえ、この男の人生をこう辿っていくと

胸が高鳴る、血が騒ぐ、そして空虚がある。

彼の人生は、すでに完結している。

最期にあるのは、死だ。

それは、時代が証明している。

今、ここに土方歳三は存在しない。

だけど、伝え続けた者がいて、生き残った者がいて

残されたモノがあって、新たに書き起こされたモノがあり

僕らは、その存在証明を感じる。

僕は、あまり歴史小説を読んだことがない。

というより、小説事体ここ数年の間に読み始めたばかり。

読みづらさもある、細かな描写がうざったくもある。

だけど、その一瞬、一瞬のまるで命の煌きのような

思わず唸ってしまうその表現が素晴らしかった。

作者の力なのか、歴史小説という力か。

または土方歳三という男の力なのだろうか。

気づけば夢中になっていた。

最初、うざったかった描写もまったく気にかからなくなっていた。

誠の旗を掲げ、命をかけ戦い続けた土方歳三

そして新選組、その足跡が聞こえた気がした。