『心理学って役に立つんですか?』 伊藤進

心理学って役に立つんですか?心理学って役に立つんですか?

たまには、こんな本もわるくない。

僕も大学で、やや優先して心理学系の授業を受けているけど、

一番の疑問点は、まさにコレ「心理学って役に立つんですか?」

興味があるから、おもしろそうだからというのが

習っている理由の最もな理由だけど、

生きていく上で、日常で生かせられるのか?

心理学と一口に言っても、これがなかなか深く広い。

でも、この本はそんな心理学で役に立ちそうなことを

架空の主人公の心理学者、大倉山シンノスケの日常を

描くという物語形式で、楽しく教えてくれる。

難しい論文形式のものより、簡単に読め進められる。

この本は、5つの章に別れている。

たまには涙もわるくない

悪戦苦闘もわるくない

暗いのだってわるくない

ひとの心は読めるのか

二流をいきるのもわるくない

個人的におもしろいと思ったものは、

暗いのだってわるくないと、二流に生きるのもわるくない。

特に「暗いのだって」は、心理学的なアプローチもあるが

社会学的なアプローチも興味深かった。

暗い人間は排除される。

明るい人間こそが歓迎される。

明るいのが良くて、暗いのはダメなのか。

静かな人間はダメなのか

こんな社会にしたのは、いったい誰だ?

もちろん心理学的な話も、ここの章を一番喰いついて読んだ。

暗い・内気な性格は直さないといけないのか?

暗いより、明るい方が周囲からも好かれるし、

明るく生きたほうが良いにきまっている。

そう思うのだけど、直せるのか?

やや、自己肯定すぎじゃないかとも思える話だったけど

自己を肯定しなければ生き辛いじゃないか。

地球上には色んな人が住んでいる。

健常者・障害者、明るい・暗い、黒人・白人などなど……

多様性な人間がいるからこそおもしろいし、勉強になる。

遺伝、環境、個人差があり、

そこには可能性も含まれれば、限界だって存在する。

価値観の違いを、排除に繋げる人たちがいる。

コイツらは、こういう奴らだから見捨てる。

差別は、ココにある。

「多様性指向型人間観」というのを作者は語っていた。

そんな社会が出来上がれば、良いのになと本当に思う。

内気がいいとかわるいとか、

暗いのはいいとかわるいとかもおなじだ。

そういうことに価値判断下すのは、

不遜なんではないだろうか

物語中で、内気に悩む学生と主人公はこんな会話をする。

そして学生は、内気を直そうとするのは不遜ですかと尋ねると、

主人公は、そういうことでなく、人間社会というものがだよと答える。

心理学のことをメインに扱っている本だけど

もしかしたら、作者はこのことを

一番書きたかったのかもしれないと僕は思った。