『竜馬がゆく 1~8巻』 司馬遼太郎

竜馬がゆく〈1〉 竜馬がゆく(一~八)

今年の読書世論調査によると、

好きな作家ランキングで一位は司馬遼太郎だった。

2位の宮部みゆき池波正太郎を2倍ほどの差をつけてのことだと。

アンケート方法に、若干の疑問を持つけれど

竜馬がゆくを読んだ後では、納得。

これほど記憶に残るであろう作品を残す人ならば、

未だに中高年に支持されるだろうし、若者にだって影響を与えるはず。

僕の中では、トップは伊坂幸太郎だけど

司馬遼太郎が、その牙城を崩そうとしている。

悔しいほどに、竜馬がゆくはおもしろい。

竜馬と寝持ちノ藤兵衛が旅の途中、竜馬は初めて富士を見た。

富士を珍しくも思わない藤兵衛と裏腹に竜馬は

日本一の男になりたいと思った。

僕はそこらにいるような小市民なので、

平時そんなに大それたことを思わないが、

何かがきっかけで、一時的にそういうことを思うことはあるし

妄想の中では日本一だ。

あくまで夢の中ではの話だが。

竜馬は、そんな夢を見させてくれる。

今の世の中では、日本一より世界一になるのだろうが、

竜馬だったら、そういう夢だって見させてくれる気がする。

まさに、英雄とはそのような人のことを言うのでないかと思う。

なにより、竜馬はそのための行動力もともなっている。

もし、竜馬を詳しく調べればそのような見識は変わってくるかもしれない。

だってこの竜馬は龍馬ではないのだから。

だけど、史実として龍馬は存在する。

竜馬は龍馬でもある。

歴史上の人物の坂本龍馬だが、

僕らは、それぞれの龍馬像を持っている。

たぶん僕の龍馬像は、『お~い竜馬』を読んで骨格ができ、

この『竜馬がゆく』で大きく膨れ上がった。

あとがきで作者はこう語っている

いや、伝書などはいい。竜馬は生きている。

われわれの歴史のあるかぎり、竜馬は生きつづけるだろう。

私はそれを感じている自分の気持ちを書く。

冥利というべきである。

物語中でもなんども感激したけど、

悔しいが、このあとがきの一文に僕は一番心を動かされた。

幕末の動乱を飛ぶように駆け抜けた坂本竜馬

小説の中に、他にも様々な人物が同時期を駆け抜けては消え、

またある者は、生き残り僕らの遠い昔の日本を築いた。

史実は小説より奇なり。

この話は、フィクションも富んでいると思うが、

やはり、史実の出来事が僕らの心を躍らされる。

いつか遠い未来に、僕らの今は、こうして語られていくのだろうか?

幕末の世は、僕にとっては危なっかしくて

とてもじゃないが、お断りなんだけど

劇的で、多くの人が本気で生きていて、このような時代を羨ましく思う。

だけど、やっぱりそれは妄想であって、

竜馬のような英雄たちに任せるべきなんだろう。

僕らは、必死に生きるだけだ。

恥のない生き方を必死で。

そういえば、昨日から読書週間が始まっている。

これを機に、未読の人は読んでみるべき本だと思う。

かなりの長編だけど、読む価値は絶対あるはず。

坂本竜馬に思いを馳せて。