『憧れのまほうつかい』 さくらももこ

憧れのまほうつかい 憧れのまほうつかい

高校の頃僕は、ローリングストーンズや、その原点であるブルース、

60、70年代の頃の洋楽のレコードばかりを聴いていた。

同世代の友達は、アメリカのパンクロックや、

日本のメロコアなんかを聞いていたが、僕はそんな奴だった。

後は、漫画、ゲーム、水泳、サッカー、お茶が好きで

好きなものに触れている時が何よりの楽しみで、幸せだった。

住んでいる場所が、ど田舎ということもあるが、

ファッションには鈍感で、お菓子なんかにもお金をかけない。

さくらさんと同じ静岡出身だが、

清水とウチとでは全然こっちの方が、断然田舎だ。時代は違うが。

飯どきも、お金がかかるからと、家に一回帰ってしまうことも。

一言で言えば、変な奴なのだ。

今だってみんな遊びやファッションにお金を、ざぶざぶ使っているのに

僕ときたら、本とCDと映画ばかり。

車には、最低限しかかけずほぼノーマル。

服だって、一万のジャケットを買うのにさえ悩む。

色々な人と遊ぶとお金の出費がかさむので、

ご飯とかも、他の友達と比べたらかなり自炊しているほうだ。

貧乏だからとかでなく、自分で自分の首を絞めている。

さくらももこも、やっぱり変な人だ。

だけど、やっぱりこの人はおもしろいし、才能がある。

話もおもしろいし、絵だってこんなに味のあるものが書ける。

つまり、好きなものにかける情熱が違うってことだ。

本編の後に載っている、絵についての思い出というインタビューが

おもしろいと同時に、そういうことを思った。

彼女にとっての憧れのまほうつかいは、エロール・ル・カイン

僕にとっての、ミック・ジャガーであり、キース・リチャーズ

ジャック・ホワイトやボビー・ギレスピートム・ヨーク

あるいは村上春樹で、伊坂幸太郎で、司馬遼太郎

浦沢直樹で、クラフトエヴィング商會なのだろう。

相変わらず、僕は節操がない。

ついでにそこに、さくらももこも入れておきたい。

ホントにさくらももこはル・カインが好きだと感じるのだが

彼のゆかりを訪ね、イギリスまで行っておきながら

どうしようもないことや、どうでもいいことをしている。

ただ、そこを笑って済ませてしまいそうなところが

彼女の魅力だったりする。

つまりは、ちびまる子ちゃんのままなのだ、そんなところが。

この本に挿入されている、ル・カインの絵も

さくらももこの絵もとても、綺麗であったかくて、素晴らしかった。

単行本を見て、買おうと思ったが

文庫があったので、そっちを買ってしまったことが悔やまれる。

もっと大きなもので見たかったし、

単行本はカバーの裏なんかもすごい綺麗な絵が付いていた。

ましてや、ブック・オフで買ってるんだから情けなや。

さくらさんが、買わずに悩んだエナメル人形のように

僕は、もんもんと変な空気間に悩まされる。

だったら、明日にでも買ってしまえばいいのだが、

内容的には同じなのだし、このまま悩んで、

結局買わないで、文庫本で我慢するんだろうか。

この辺が、僕の情熱の限界なんだろう。