『日々の非常口』 アーサー・ビナード
すでに日本に暮らし始めて、数十年。
本を読む限りだと、かなりの日本通。
僕らの知らない、いや普通に日本に暮らす僕らだからこそ
知らないこと、気に留めないようなことも知っている。
日本の文化、アメリカの文化。
あるいは、日本の言葉、アメリカの言葉。
そういうものが、とても興味深く綴られた、エッセイ風の本。
翻訳の仕事もしているので、特に言葉が強烈で
温かく、時にシニカルというにはパンチが効いていないが、
味のある文章だった。
僕は、本とは、思いや行動を言葉にしたものだと思っている。
それを言葉にするには、限られた言葉しかない。
日本語にしかないもの、英語にしかないもの。
作者が、困惑しながらも、楽しそうに
訳詩しながら文を書いているのが浮かんできた。
そして、日本の文化に関して、
作者がすごい好奇心を持って接しているのも感じられた。
もう、僕らが当たり前だと思うことを、なぜ?
と、感じ理解しようとする行動がとても楽しい。
きっと、僕らの小さい頃でさえ、こんなに好奇心を持って
文化に接していなかっただろう。
大人になったって、そういう心は持ち続けられる。
心外だって、言われそうだが、とても毎日が楽しそうな人だと感じた。
僕も、そのように、どんなものにも好奇心を持ち続け、
毎日が穏やかに過ぎるけど、
刺激に満ちているような暮らしをしてみたい。