『厭世フレーバー』 三羽省吾
この物語は、5章に別れている。
十四歳、十七歳、二十七歳、四十二歳、七十三歳。
最初の章を少し読み、てっきり僕は、1章の少年の成長する話。
人生に悲観するような、現代社会を描いたような話だと思った。
だけど、違う。
これは家族の話だ。
どうしようもなく不器用な家族の話。
そしてそれは、どこにでもありそうで、なさそうな家族の話。
色々な人が共感できそうだが、複雑な家族の話だった。
この物語は、5章に別れている。
それは先ほどにも言ったけど、章は家族の数存在している。
それぞれ、次男、長女、長男、母、祖父との視点となっている。
おもしろいところは、父がいないということだ。
父は死んでいないわけでなく、存在している。
しかし、父親は失踪してしまっている。
父親が失踪からの、厭世風味の家族の物語だった。
最初の章を読んだところ、14歳の少年の語り口調が、気持ちが
頭ではわかっているが、どうも慣れなくて、苦戦したが
次からの章を読むにつれ、だんだん最初の章も悪くない気がしてきた。
そう、おもしろかったのだ。
章が続くにつれ、この家族の形がだんだんはっきりしてきて
父親のことも少しずつわかってきて、一気読みできた。
厭世とタイトルにあるけど、ちゃんと光はあった。
少しラストは、唐突に幸せ家族に行きすぎな気がしたけど、
これも1つの家族の形だって思った。
そのラストに繋がるまでの、不穏な家族も
このような家族も、やっぱり家族なんだって。
ついでに、最期の祖父の観点からの章は、すごい笑えました。