『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド、村上春樹 訳

グレート・ギャツビー グレート・ギャツビー

美しくも儚い、人の心の移りよう。または、映りよう。

ギャツビーの精神は、一人グレートだった。

僕には、村上春樹の文体が、とても読みやすく、美しく感じる。

その村上春樹が、非常に美しいと語るこの作品。

僕には、原文を読めるほどの語学力もなければ、

小説を読むにあたる読解力というものも、

さほど優れたものを持っていない。

そのような、ごくごくありふれた一般人から言わせて貰えば、

とても親切で、美しい翻訳だった。

いささか、わかりにくいとこもあるが。

それでも、原文自体も、素晴らしいものだって感じられるものだった。

特に、最初と最期の部分は、愛おしいと思えるほどだった。

物語自体は、驚くことが待ってはいるが、

昨今の小説には、もっと衝撃的な内容など、ざらにある。

とりわけドラマティックとも呼べない。

または、時代に問いかけるような社会的な文学も多くあると思う。

だけど、引き込まれてしまう。

ああ~良い小説なんだなって実感する。

古臭い小説のはずなのに、とても古臭く思えない。

『夏への扉』や、ビートルズの曲を今聞くのと同じ感覚だ。

村上春樹が、ものすごい絶賛する理由は、まだわからない。

いつか、僕がこの小説を絶賛する日がくるのだろうか。

人の心は、移ろいやすいから。

絶え間なく、僕の心が前へ前へと進むといいのだけど。

だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。

流れに立ち向かうボートのように、

絶え間なく過去へと押し戻されながらも。

ある晴れた朝に、読了です。