『裏切り SVEK』 カーリン・アルヴテーゲン

裏切り 裏切り

最新刊が出ているのに、まったく気づきませんでした。

カーリン・アルヴテーゲンの3作目。

前2作が、とてもおもしろかったので期待して読みました。

確かに、よく出来ていた。

上手だった、とても深いところの人の心理を痛いほどに突いていた。

だが、やりすぎだ。

『裏切り』というタイトルから、あまり良い話を想像できなかったが、

堕ちていく、壊れていく、バラバラになってしまう。

そんな身を引き裂かれるような心理、サイコ・サスペンスで

もはやホラーの域まで達している話だった。

物語は、ある小さな家族の話。

そして、ある男の話。

愛と憎悪は紙一重と良く聞くが、そういう話だった。

夫婦の心のすれ違いと第三者の介入。

彼らの心内をわかるのは、読んでいる僕らだけで

作中の人物は、すれ違いばかりを繰り返す。

相手の心の声を聞けないのだから、勝手な思い込みばかりをする。

やがて訪れるのは、裏切りと崩壊。

しかし、アルヴテーゲンは前2作で僅かたが、

確かな希望の光も書いて見せている。

この話でも、ほんとにごく小さな明るい光がある。

しかし、狂ってしまった、まだら模様のような心。

どす黒いと思えないが、何か異物の混じってしまったような心の色。

そんな色に光は、飲み込まれていくような気がする。

ラストは、どうなったのか。

それは、自分で読んでみて確かめるしかない。

ああ、いやだいやだと感じるのだろうか。

これこそ愛の話だと思う人もいるのだろうか。

ある意味、勝ち取った愛の話。

だけど、僕は絶対こんなの嫌だし、飲み込まれたくない、落ちたくない。

そんな、絶望的なエンディングだった。