『幸福な食卓』 瀬尾まいこ
毎朝、家族一緒に食卓で朝食を食べる。
そんな幸せそうな家庭は、もう今の日本ではあまり多くないと思う。
だけど、毎朝一緒じゃなくても、
家族はしっかり成立していて、幸せそうな家族は存在しているんだろう。
いつも、朝食を家族で食べる、この主人公の家庭。
しかも、それが強制というわけではなさそう。傍目では、幸せそうだ。
だけど、「父さんは今日で父さんをやめようと思う」
ショッキングな一言から、物語は始まっている。
しかも、その父は、昔自殺を試みており、母は家を出ている。
家族は、壊れている。
それでも、成り立っている。
家族は、そうめったに消滅はしない。
どんなに辛いことがあっても、また朝が当たり前のようにやってくるよう、
簡単に切れたりするものでもない。
別れても、壊れていても、家族だと教えてくれる。
この物語の家族は、多くのことを抱えている。
一見、一番悩みもなさそうな兄も。
主人公の少女、佐和子も。
彼女は、物語を通じて、多くの幸せと悲しみを抱えていく。
辛い別れも、経験していく。
それでも、家族だけは、例えバラバラでもそこに居てくれている。
大事だってことは知っておかないとやばいと思う。
家族に関して、兄の恋人はこう、佐和子に言う。
どういう家庭であれ、家族であった、家族であるということは、
わかっていて欲しいという、願いにも似た言葉だと思った。
優しくても、悲しい、ビターでスイートで
切なくとも、幸福に向かってくれるような
余韻を残してくるような話だった。