『走れメロス』 太宰治
かならず帰ると ちかいを交わして~
走るメロスは 風のように~♪
という歌を小学生の頃歌った記憶がある。
だけど、普通の文章としては、初めて読んだ。
友人に何かオススメ本ある?
と、本屋で聞いたら、なぜか薦められたこの『走れメロス』
これほど清清しく、勇気づけられる作品に少し動揺した。
しかし、この本は短編集でメロスは、その中の一つに過ぎない。
『東京八景』『帰去来』では、
間違いなく自伝であろうというリアルさからの
その苦悩と、どうしようもなさに、絶望さえ感じた。
だけど、素晴らしい文学作品だとは思う。
最近で言うとリリー・フランキーも同じ感じなのだろうか。
ダメ男っぷりが、すぐれた作品を生み出す源なのか。
しかし、太宰は、リリーさんのそれより酷い。
両者ともだが自分の愚劣を自覚している分、タチが悪い。
そのせいで、僕らは感情移入してしまう。
いわば、保護者になってしまう。
思わず見守らずには、いられないのだ。
他の作品も良作で、やぱりすごい人だったんだなと思えた。
「ダス・ゲマイネ」「富嶽百系」「女性徒」
は、中でもお気に入り。
キリストとユダ。愛ゆえの苦悩を描いた「駈込み訴え」
ラストを飾る「故郷」も、とても読ませられる。
太宰治の生き方は、未だに好きになれないが、
作品は、好きになれそうだ。
誰だって、苦悩はある。
その苦悩を、さらけ出すかのように書いているのだから。
そこにシンパシーを感じられずにいられない。
すべての罪人は聖人 同じように表裏一体だ。
そんな歌を歌っていたバンドがいた。
誰だって心の中にルシファーがいる。
そいつには制御が必要だと。