『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒 まほろ駅前多田便利軒

うん、なんかドラマ化してもおもしろそうだ。

探偵ではないが、便利屋。

だけど、探偵物のような雰囲気をかもし出す。

適度にハード・ボイルドだけど、エンターテイメント。

フラフラしているようで、実は地域密着型の稼業。

陰と陽が、混じりあっていて、暗いようで明るい印象を受けた。

主人公は、色々な悩みや葛藤を抱えている。

だけど、本当に絶望するまでに陥っていない。

だからといって、笑い飛ばせるほど吹っ切ってもいない。

彼の元に転がり込んできた、元同級生。

親友どころか、友達でさえないが、

二人は、一緒に生活して、便利屋稼業を行う。

非常にアンバランスで、いびつな関係性。

便利屋という仕事から、彼らには多種多様な人々が集まる。

まあ、そこは彼らの物語なので、僕が語るまではない。

便利屋ならば、人がいる限り仕事に終わりはないだろう。

人は、色々なものを求めるし、

お金で変えられるなら、楽をしたいことだってある。

人生だって、同じ。

誰だって、楽をしたい。楽になりたい。

何かがようやく、終わったと思っても、

別の何かがやってくるんだろう。

死ねば、終わりかもしれないけど、

自分の携わった人たちの物語は続いていく。

よく人が亡くなって形は無くなっても、

思い出は心に残るという。

そんなこと、綺麗ごとだって思うけど

そんな風に思えないと、世の中つまらなすぎるし、淋しすぎる。

だから僕は、そんな綺麗ごとがとても素晴らしいと思う。

あっという間に終わりが来そうなんだけど、

いつまでも続いていく気がする。

永久未来続くことなんて、ありえない。

そんなことわかっていながらも、だから何だっていうんだ。

そんなエネルギーを感じた。