『空を見上げる 古い歌を口ずさむPulp-town fiction』 小路幸也
いいな~。うん、こういう話好きだな。
兄さんに、会わなきゃ。
20年前に、兄が言ったんだ。姿を消す前に。
「いつかおまえの周りで、
誰かが<のっぺらぼう>
を見るようになったら呼んでほしい」
帯に惹かれて、読んでみた。
就活で実家に帰り、地元の図書館で読んだ本。
地元の図書館は、帯も貼り付けてくれるから
ついつい、読みたい気にさせられる本が出てきてしまう。
こういう心にくい気配りが好き。
そうそう、本の話に。
物語は、ほぼ兄の少年時代の回想になっている。
なので、ノスタルジックであり、不思議でワクワクする。
カタカナの町、パルプ町。
Pulp-townで繰りなされた、兄の思い出。
のっぺらぼう、という言葉だけでかなりの不思議な世界だが
途中から、さらにファンタジーに満ちるお話になる。
兄の見た、のっぺらぼう。
そしてボクの子供が見る、のっぺらぼう。
兄は、ずっとそのことを弟のボクにも内緒にしていて
そのボクの子供のために、長く、古い話を始める。
のっぺらぼうの、謎に関しては、
わかったようで、わからないような。
まあ、純粋なミステリーってわけではなく、
伝奇やファンタジーの部類のように思えて、
児童文学のようにも思える一面もあったりして謎に関しては、
そんなにはっきりさせてなくてもいいかなって思った。
だから、大人なミステリーを好む人には難しいと思うし、
タイトルから、ただ、ノスタルジーを感じさせる話を
期待した人にも厳しいかなと思う。
盛り上がると言えば、盛り上がるけど
こういう話で、そんな謎解き入らないとも感じた。
でも、僕はこんな、ある意味ぶっ飛んだ話は好きで
こういう雰囲気の話が好きだったりする。
のっぺらぼうという設定はぶっ飛んでいるが、
そこから、何も妖怪大戦争といったような
ぶっ飛び方はない。(ある意味、戦争にはなるのだが)
あくまでメインは兄の少年時代の話なので、
縮こまるとまで言わないが、パルプ町での
小さくて、暖かくて、勇気ある話だった。