『写楽 閉じた国の幻(上・下)』島田荘司

写楽 閉じた国の幻(上) (新潮文庫) [文庫] / 島田 荘司 (著); 新潮社 (刊)写楽 閉じた国の幻(下) (新潮文庫) [文庫] / 島田 荘司 (著); 新潮社 (刊) 写楽 閉じた国の幻(上・下)』

ようやく会社の進級試験が終わって、趣味に時間が使える時間ができた。

正直、学校のテストより真面目に勉強するよね。

お金という死活問題に繋がるわけなので。

そんなこんなで、ブログも再開したのにまた放置をしてしまった。

でも、本はちょくちょく読んでいたので、ブログネタには困らないけど、

業界の本とか雑誌を試験に関係あるところをピックアップして読んでたので

大半は使えないものばかりだけども。

そんな中で読んだのがこの本。

島田 荘司さんの本は、親父がいくつか買っていたので名前は知っているけど、

実家で暮らしていた高校までは、読書というものに関心がほとんどなかったので

ミステリー作家として名前は知っているくらいなので初読。

親父が買っていたという理由で、今回この本を買って読んでみたわけでなく、

タイトルに惹かれての購読だった。

写楽」というタイトルから多くの人は浮世絵師を連想させると思う。

実際僕もそうなのだけど、それは2番目で、

1番は手塚治虫の『三つ目がとおる』をまず連想した。

いつ頃見たんだろうかなぁ。再放送?

なんとか子供を通じて繋がっていた、冷め切った夫婦の夫を主人公に、

その子供が事故死してしまい、一気に転落していく中で、

東洲斎写楽の正体を追っていくという物語。

子供の事故死と写楽にどんな関連性があるんだろうとまず思うが、

そこはネタバレで言ってしまうけど、まったく関係がない。

というか、子供の事故死や主人公の話はこの本の本筋からいくと、

まったくどうでも良い内容で、

ただ写楽という謎を小説形式で追っていくための、

駒としてしか成り立っていないところは残念だった。

作者もあとがきで、写楽のことに力を入れすぎて、

主人公のことを掘り下げられないのが残念だったと書いてあったので

続編に期待していいんだよね?

ということで、肝心なのは写楽の謎になってくる。

写楽と聞いて、アニメの写楽君を連想するように

自分は写楽のことをまったく知らない。

世界三大肖像画家ということも知らなかったし、

写楽の正体を誰も知らないということも知らなかった。

そんな自分でも写楽のことを1から知ることができて、

その正体を追うプロセスはとてもわかりやすくて、

説得力を持っていて、ひとつの論文を小説という形式で

読んだような感想を持った。

また、喜多川歌麿歌川広重葛飾北斎山東京伝十返舎一九など

学生時代に歴史の授業でなんとなく知っていた人物なども

取り上げていて、古い時代の風俗事情も面白い。

全ての中心となる写楽とその版元の蔦屋重三郎の謎を

浮かんでは消え、浮かんでは消えてと推理していく物語は、

まさにミステリー小説だった。