『ホームタウン』 小路幸也
大切な人たちがいて、忘れられない場所がある。
僕にとって、ホームタウンはそんなところだ。
大人は年をとり老けていき、子供は成長し大人になっていく。
街も、めまぐるしく変化していく。
しまいには、合併して元の地名ではなくなってしまった。
それでも、僕が育った街だ。
他のどんな場所にも変えられない。
しかし、この話の主人公は、ホームタウンに帰ろうとしない。
愛していないから?
違う、悲しい、いや憎悪すべき過去が、眠る街だからだ。
だが、主人公の妹とその婚約者が失踪してしまい、
その手がかりを探すため、彼は帰ってくる。
失われた家族から、新しい家族へ。
そんな、喪失から再生へと向かう、
罪や罰、様々な負の感情を抱えながらも、
大切なものを守ろうとする、
故郷のように、暖かい話だった。