『四畳半神話大系』 森見登美彦
一言でいうとゲームだ。
ゲームの世界にはifがある。
主人公の選択肢で物語は、いくつもに移ろいゆく。
そんなこといったら、人生だって同じじゃないかと思うが、
そのifの可能性を、一つの章として物語を成立させていることに
この本のゲーム性を感じた。
だが、いくつもの選択肢があっても、
どこへ行っても、切っては切れない腐れ縁。
いや、赤い糸。いやいや黒い糸。
そんな運命と呼べる縁が、この世にあるのかもしれない。
数限りない可能性の世界があっても、必ずそれは存在しているという。
そんなものが、この物語の主人公にも存在している。
四畳半に住む主人公の、どこまでも広がる四畳半分の神話。
その神話は、主人公のためのもので、
ある意味、神は主人公自身。
話としては、『太陽の塔』や『夜は短し恋せよ乙女』系列。
理系っぽく、冷静、頭脳明晰(自称)なのだが、
その行動力と、妄想力の力でグイグイと引っ張ってくれる。
森見さんの、他の作品に出てくる人物や、名称も、
たくさん出てくるので、その点でもおもしろい。
そんな京都を舞台にした、四畳半に住まう主人公のためのお話。