『酸素は鏡に映らない』 上遠野 浩平
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」
ミステリーランドシリーズ。
これは、子どもだった僕のためのと、思えるような作品だった。
もちろん、少年少女のための本でもあると思うが、
時折入ってくる、特撮ヒーロー物のこととが一つ。
もう一つは、この本は、少年の頃読んでいた(今も読んでいるけど)
ブギーポップシリーズでもあるということ。
ブギーポップは出ないけど……
細かい内容や、人物は忘れかけているが、
ああ~、いたなこの人とか、
オキシジェンがいい役だなとか思いながら読み進めた。
物語で、酸素は触媒と言っていたように、
主人公の少年のための触媒みたいなキャラだった。
書いていることといえば、いつもと変わらないけど、
不思議ではあるが、そんなに複雑な内容ではないことが、
作者の気遣いかなと思った。
そして、読んでいて感じるのは、
この作者は伝えたいことを持っているということだった。
生き方であったり、世界のことだったり。
論文やエッセイにしてみても面白いと思うけど、
たぶん小説というものが好きなんだと思う。
ブギーポップのシリーズでも、そんなような言葉があったことだし。
少年の活躍、ヒーローの存在、謎解き、出会いと別れ。
舞台は、いつの時期とかはっきりしないけど、
ひと夏の冒険といえるような、
この時期に読むのもいいなと思える本だった。
とはいえ、なにせ難しいことを言っていて、
ポカーンとするような場面があって、謎めいている。
読み手として、そういう部分を考えて、疑ったり、信じたり、
なんとなくでも感じ取ったりするようなところは、
大人だろうが、子どもだろうが、変わらないんだろうなと思った。