『蹴りたい背中』 綿谷りさ

蹴りたい背中 蹴りたい背中

ああ~、なんとなくわかるな~

自分の高校生だった時期を思い起こすのにピッタリの作品だった。

アノ頃のモヤモヤしたやり場のない、逃げ場のない気持ち。

わけのわからない思い。

芥川賞が獲れるほどすごい作品とは思わないけど、

特に少し、消極的な若者に合うんじゃないかと思う。

なぜかというと僕もそんな一人だから。

そうでない人にも共感できることが多々出てくる部分がある。

そうじゃなきゃ作者の人気だけで何百万部も売れないだろう。

小説だって音楽と一緒で、その作り手の人間性を表す。

芥川賞を獲ったということは、

その分多くの人が本を手にするきっかけが出来て、

よかったと思う。たとえ人気どりのためと言ってもね。

若いということは、それだけでも武器だ。

小説をこの若さで書こうと思っても、なかなかこれが難しい。

僕がこの本で一番気になる所は、ハツとにな川の二人の関係じゃなくて

ハツと絹代の関係だ。

中学の時仲良かったのに、高校で別のグループに分かれてしまって

気まずいという訳でもなく、仲が悪くなったわけでもないけど、

なんとなく離れてしまった。

向こうには向こうの世界があって、私には私の世界がある。

これからこの二人は友達でいるだろうけど、離れていくんだな~と感じた。

ずっと繋がっているばかりが友達じゃない。

離れていたって友達だろうけど、そう思う人ばかりじゃないこともわかる。

だからこの頃は、難しいと今も思う。

いくらでも楽に生きようと思えばできるけど、

真面目に一生懸命になるほど難しいし、

みんなに合わせていけないと本当に苦しいこともある。

蹴りたい背中、蹴りたいという感情。よくわからない感情。

これからどうなっていくんだろうな?