『あかんべえ(上・下)』 宮部みゆき

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)

人情+ファンタジー+ミステリ。

しかも長編小説ということなので、

読み手は大人になってくるのが当然なんだろうけど、

ここはあえて子供に読んで欲しいと思える話だった。

読み終えて、色々感想が浮かぶのだけど、

解説の一発目に、自分の言いたいことが、はっきり書かれていた。

「健気」という一言。

主人公のおりんに向けられた言葉。

おりんの優しさと、素直さと、健気さ。

そしてそれは誰の心にもあるものだと。

人間賛歌とも言える、ホラーもあるが優しい物語。

キキ、メイ、千尋といったジブリキャラに感じるような、

暖かく見守りたくなるような気持ちで本を読み進めていた。

そして、そんな気持ちはこの本の中の人物も同じようだった。

悪い人がいて、世の中がいいことばかりじゃないから、

宝物のように、おりんを大切にする大人達に囲まれて、

おりんもその優しさに応えるかのように、動いていく。

時代物なのだけど、ファンタジー色と、

人の優しさ、少女の健気さを感じて、

ジブリの映画みたいに思えた。

だからこそ、アニメ化でもして、子供にも見て欲しいと思ったし、

大人にも受けるだろうと思った。

物語もそんなにこんがらがったものでもないし、

ミステリも、それほど強くないし、

なんとなく秘密もわかるものも多い。

幽霊もでるが、ホラーもきつくない。

なので、おりんの魅力がすごい引き立って、

おりんの中にある、優しすぎるくらいの思いが伝わってきた。

優しく、純粋な心は、他人を変える力がある。

そう感じた。