『魔王』 伊坂幸太郎

魔王  魔王

思わず戦慄が走る。

伊坂幸太郎は、変化した。いや、進化したと言うべきか。

より文学的になった最新作。

でも、やっぱり伊坂節は、健在。

この人の強みは、やはり会話だ。

そして何より、おもしろい。

この本は「魔王」と「呼吸」の2編に別れている。

2つは、繋がっていて「呼吸」は「魔王」の5年後の作品。

『重力ピエロ』を思い起こすような、兄弟の物語であり、

世の中に問うような、かなり現在の社会事情に

かなり影響を受けたような物語。

あと、物話的には「魔王」の方が好き。

僕も兄弟がいて長男ということもあるし、

やっぱり、この兄貴のかっこよさは、ただ事ではない。

「考えろ、考えろマグガイバー」

何でこんな、この話を好きになったのか、なんでこの兄貴が好きなのか。

それは、やはりアノ言葉

でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば

そうすりゃ、世界は変わる。

青臭いし、どこかで聞き覚えがあるんだけど、

やっぱりこういう言葉が好き。

人々の心をわしづかみにする若い政治家が、

日本に選択を迫る時、

長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、

弟の直感と呼応する。

この先にあるのは、青空なのか、荒野なのか。

なにやら続編も匂わせるような、

でもやっぱりここで終わりなような、終焉。

作者が言いたかったのは「考えろ、考えろ」ということなんだろうか。

情報に惑わされず、自分で考えるんだ。

そうすれば、世界は変わるかもしれない。たぶん。